国指定史跡二子塚古墳発掘調査成果

更新日:2021年03月09日

~令和元年度・令和2年度の調査~

発掘調査成果の公開

町教育委員会では、全国的にも珍しい双方墳である「国指定史跡二子塚古墳」を整備するために令和3年1月から史跡内の発掘調査を行いました。このたび、史跡の内容が明らかになり、新たな知見が得られたことから、ホームページを通じて公開します。

二子塚古墳(西から)

二子塚古墳(西から)

二子塚古墳とは

二子塚古墳は7世紀中葉に築造された全長69メートル、幅35メートルの双方墳で、長方形の下段墳丘上に東西二つの方形の上段墳丘がのり、それぞれに同形同大の横穴式石室が構築され、珍しいカマボコ型の家形石棺が納められています。その希少な価値から昭和31年11月28日に国史跡に指定され、令和元年10月16日にはこれまでの発掘調査で古墳の範囲が拡大したことから追加指定を受けました。

二子塚古墳と周辺の古墳

二子塚古墳と周辺の古墳

 

左下が二子塚古墳、右上は推古天皇陵

左下が二子塚古墳、右上は推古天皇陵

 

発掘調査の経緯

町はこの貴重な古墳の劣化が進んでいたことから、適切な保存管理のため平成27年度から保存整備事業を進めています。事業は考古学や史跡整備の専門家による委員会で検討を行い、平成29年度に保存活用計画、平成31年度には整備基本計画を策定して、その方針を定めました。

整備を行うに際して、古墳の保存状況の確認が不可欠であることから、平成28年度から現在までに4次の発掘調査を行いました。

本年度の成果を公開するに際し、調査結果を検証できた平成31年度の第3次調査の成果も、合わせて公開することとしました。

調査区位置図 2019は平成31年度、2020は令和2年度調査区

調査区位置図  2019は平成31年度、2020は令和2年度調査区

 

調査成果

第3次調査

東石室の前面の調査では、新たに墓道を発見し、閉塞石の全貌も確認しました。墓道は短い羨道の前にやや広い前庭部を設けた珍しい構造でした。また、墳丘盛土が2回に分けて行われ、盛土の途中で墓道を掘削し、埋め戻した後にあらためて盛土を行っていることが推定できました。しかし、この調査では墓道をどのような順序で作ったのか明らかにできませんでした。

 第3次調査 調査区1で検出した墓道と閉塞石

第3次調査 調査区1で検出した墓道と閉塞石

 

第3次調査 調査区1 墓道の南側断面

第3次調査 調査区1 墓道の南側断面

 

 

第3次調査 調査区1 閉塞石と墓道埋土の断面

第3次調査 調査区1 閉塞石と墓道埋土の断面

 

 

第3次調査 調査区1 墓道の断面図

第3次調査 調査区1 墓道の断面図

 

また、西墳丘の調査では方墳の角を新たに確認しました。また、東西の墳丘間にある中央土壇が西墳丘と同時につくられたことが確認できました。

第3次調査 調査区2 西墳丘北東の隅角部分

第3次調査 調査区2 西墳丘北東の隅角部分

 

第3次調査 調査区2 西墳丘の隅角と中央部土壇

第3次調査 調査区2 西墳丘の隅角と中央土壇

 

第4次調査

第3次調査で明らかにできなかった墓道の構築順序が、推定どおり盛土の途中で掘削され、埋め戻した後にさらに盛土し墳丘を整えていたことが分かりました。また、石室横の大型石材の形状を明らかにでき、石室先端の天井である可能性が高くなりました。

7世紀後半の古墳の構築過程の一端が明らかになった例は少なく、貴重な成果といえます。

第4次調査 調査区全景

第4次調査 調査区全景

 

第4次調査 調査区1のトレンチ

第4次調査 調査区1のトレンチ

 

第4次調査 調査区2の大型石材

第4次調査 調査区2の大型石材

 

まとめ

二子塚古墳が長方形の下段墳丘に二つの方墳がのる双方墳であるとともに、横穴式石室が短い羨道に特異な墓道をもつこと、蒲鉾型の家形石棺が納められていることから、古墳の終末期への変化を解明するうえで、重要な資料となるものと言えます。

町では二子塚古墳の保存整備事業をすすめており、古墳の保護と活用のための整備を行います。具体的には、開口している石室はそのままに、のぞき込み見学ができるようにしながら墳丘を保護します。また、墳丘保護のためやむなくサクラの伐採を行ったことから、エントランスゾーンに新たにサクラを植栽して景観を継承し、見学路やトイレなどの便益施設を設置する計画です。

整備イメージ(西から)

整備イメージ(西から)

 

整備イメージ(東から)

整備イメージ'(東から)

 

 町立竹内街道歴史資料館では、今回の発掘調査成果を紹介するパネル展「国史跡二子塚古墳の発掘調査成果」を5月9日日曜日まで行っていますのでぜひ、お立ち寄りください。

 

考古学メモ

横穴式石室(よこあなしきせきしつ)

古墳の埋葬施設のうち横に入口をもつ石組みの墓室。古墳時代の後半に盛んに営まれました。

家形石棺(いえがたせっかん)

古墳時代後期によく見られる石棺の一種で、蓋が屋根型をしており、代表的なものは屋根に縄掛け突起がつきます。

墓道(ぼどう)

横穴式石室の埋葬する墓室に通じる通路。

羨道(せんどう)

墓道の前半部分で、通常は天井が石でおおわれている。

閉塞石(へいそくせき)

埋葬後に墓室を閉じるために積み上げた石。

 

この記事に関するお問い合わせ先

太子町教育委員会事務局生涯学習課
電話:0721-98-5534
ファックス:0721-98-4514
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